1. はじめに:日本の保険業界を牽引する三巨頭の動向
日本の保険業界を代表するSOMPOホールディングス、東京海上ホールディングス、MS&ADインシュアランスグループ。
11月19日に発表された2024年度第2四半期決算では、いずれも堅調な業績を記録し、国内外での事業展開が注目されています。
本記事では、3社の業績データを比較し、それぞれの強みと課題を明らかにします。
2. 売上規模と成長率の比較:トップラインの違い
3社の正味収入保険料を見ると、東京海上とMS&ADが2兆5,000億円超でほぼ並び、SOMPOはやや控えめな規模ですが安定した成長を見せています。
売上規模の比較表
項目 | SOMPO | 東京海上 | MS&AD |
---|---|---|---|
正味収入保険料 | 2兆4,500億円 | 2兆5,300億円 | 2兆5,395億円 |
増収率 | +9.3% | +11.9% | +11.9% |
主な要因 | 国内事業と資産運用の安定 | 海外事業の拡大 | 国内外のバランスの取れた成長 |
東京海上とMS&ADは海外事業の拡大が売上成長の主因。特にMS&ADではロイズ保険やアジア市場の成長が目立ちます。
3. 利益の比較:稼ぐ力と収益性
3社の利益水準を見ると、東京海上とMS&ADが政策株式売却益や自然災害影響減少により大幅な増益を達成。SOMPOは安定した増益基調を維持しています。
利益の比較表
項目 | SOMPO | 東京海上 | MS&AD |
---|---|---|---|
修正利益 | 1,556億円 | 5,003億円 | 5,003億円 |
前年同期比 | +16.7% | +343.6% | +348.9% |
主な増益要因 | 火災保険収支改善、資産運用 | 政策株式売却益、自然災害影響減少 | 同左 |
SOMPOの成長は堅実ですが、東京海上とMS&ADは収益構造の大きな改善が利益を押し上げています。
4. セグメント別の特徴と戦略
3社の国内損保事業と海外保険事業の特徴を比較すると、それぞれ異なる強みが浮かび上がります。
(1) 国内損保事業
- SOMPO:火災保険の収支改善が主な収益源。自動車保険は事故率上昇が課題。
- 東京海上:火災保険と自動車保険がともに好調。自然災害の影響減少も追い風。
- MS&AD:EI損害率が大幅改善(72.1% → 65.4%)。火災保険の増収が貢献。
(2) 海外保険事業
- SOMPO:再投資利回り向上と地理的拡大が収益を支える。
- 東京海上:北米やブラジルの引受が順調で、トップラインが拡大。
- MS&AD:ロイズ保険の収支改善とアジア市場の成長が際立つ。
5. 株主還元の強化:配当と自己株式取得
3社は業績好調を背景に、積極的な株主還元を進めています。特に東京海上は配当金の増額と自己株式取得額で他社をリード。
株主還元の比較表
項目 | SOMPO | 東京海上 | MS&AD |
---|---|---|---|
配当金(2024年度) | 132円(+20円) | 162円(+32%) | 145円 |
自己株式取得 | 1,550億円(中間) | 2,200億円(通期) | 600億円(中間) |
東京海上の積極的な株主還元策が際立っていますが、SOMPOとMS&ADも着実に増配を進めています。
6. まとめ:3社の特徴と今後の注目点
3社の総評
- SOMPO:国内事業の収益安定性が強み。成長率や株主還元で他社と差が見られる。
- 東京海上:自然災害影響の減少や海外事業拡大で、利益成長率がトップ。株主還元でもリード。
- MS&AD:バランスの取れた事業ポートフォリオで、国内外での成長を実現。
今後の注目ポイント
株主還元のさらなる強化と持続性。
各社の海外事業のさらなる拡大戦略。
自然災害リスクへの対応策と収益安定性の維持。